付き合い始めて2年
彼とは社会人になってすぐ、友人の紹介で出会った。
2歳年上の彼は社会人としても2年先輩。仕事のことで悩んだときは嫌な顔せず話を聞いてくれるとても優しく頼りになる存在。

そんな彼が4月に転勤となることが決まった。
ついてきて欲しいと言われたわけじゃないし、私も社会人となって3年が経ち仕事にも慣れてきたし、何より後輩ができて楽しくなってきたところ。
その後輩たちと一緒に上司から任された仕事もあるし、やりがいもあるからついて行きたいとも言えない。
けれど、遠距離恋愛なんて経験ないし寂しくて不安。
でも彼のために背中を押して笑顔で送りだしてあげたい。
だけど彼は私とのこれからをどんなふうに考えてるんだろう……
一日一日、彼の転勤の日が近づく。
転勤前の最後のデート
私は彼の気持ちを確認できないまま、転勤前の最後のデートを迎えた。
ふと気が付くと思い出の桜並木を二人で歩いていた。 彼と出会って初めてデートした日に歩いたのがこの桜並木。
その時は緊張していたせいか、お互い顔を見るより桜ばかり見ていたので二人の目に焼き付いている桜。

まるで初めてのデートと同じような緊張感に包まれて、
「ちゃんと彼の気持ちを聞こう!」という思いと、
「もし、別れ話になったらどうしよう……」 という不安な気持ちが交錯しながら、満開の桜を見る余裕もなく、うつむき加減で歩いていると、
「あのさ」
先に切り出したのは、彼の方だった。
「何?」
「遠距離になってごめん」
「ううん、仕事だもん、仕方ないよ! 私、大丈夫だよ!」
「……」
「……」
「……ごめんな。寂しい思いさせることになって」
「……」
「これからは今までみたいに簡単には会えないかもしれないけど、離れてても気持ちは変わらないから! そして来年も必ずこの桜並木を一緒に歩こう!」
「うん、約束だよ」
彼の言葉を聞いて、涙がこぼれた。
彼は出会ってから毎年歩いたこの桜並木を、来年も二人で歩く約束をするために最後のデートコースに選んでくれたのでした。
そして、
「約束の印にコレ」
彼に渡された箱を開けると、中にはグリーティングカードが。
二つ折りのカードを取り出し開いてみると、頭上を覆う満開の桜に劣らない美しい桜の木が現れ、その枝に桜の花びらの形をしたネックレスが揺れていました。
遠距離恋愛を始めて1ヵ月。サプライズなプレゼントが!
彼が引越して1ヵ月。
できる限りメールと電話で寂しさを紛らわしてきたけど、やはりすぐに会えないという現実が孤独感をつのらせます。
そんなある日、宅配便で彼から荷物が送られてきました。
中にはデジタルフォトフレームが。早速箱から取り出し、再生してみると‥‥
画面の中でつぼみの桜が、三分咲き、五分咲き、七分咲き、そして満開となる写真がスライド再生されます。
そう、まさしく二人で来年も歩くことを約束したあの桜並木です。
私が寂しくなることを想定していた彼は、あらかじめ桜の写真を撮影しこのタイミングで送ることを計画していたのでした。

このフォトフレームのスライド写真を見ることで、彼からのメッセージが伝わります。
「会える時間は桜の開花と同じように短いけど、来年も、再来年も必ず桜は咲くから」
まだ寂しい気持ちもあるけれど、彼がくれた数々の桜に囲まれて前向きな気持ちになれました。