父から娘へ卒業サプライズ~パティシエの夢を応援するアフタヌーンティー

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私がパティシエの夢を持った理由

それはまだ、物心がついたばかり。私が幼稚園の頃のことです。
5歳の誕生日を迎えた私。
誕生日ケーキを買いに、母に手をひかれ近所のケーキ屋さんに行きました。

ケーキ屋さんにあったのは、大きなショーケースと、そこに入った色とりどりのケーキ。
カラフルでキラキラしていて、母のつけるかわいいネックレスやお気に入りのユニコーンのぬいぐるみより、私には特別なもののように思えました。

「ケーキって、誰が作っているの?」
こんな特別なものを作っているのは誰なんだろう?

純粋に感じた質問を母に投げかけると、
「パティシエっていうお仕事の人が作っているのよ。パティシエさんは、ケーキとかお菓子とかを作る人のことなの」
そう母は教えてくれました。

はじめて知った、パティシエという仕事。
カラフルでキラキラしていて、そしてとっても美味しそうなケーキに囲まれる夢のような仕事。

「パティシエさんはいつもこんなキラキラした場所でお仕事できるんだね!
美味しいケーキも食べ放題だし! 私もパティシエさんになる!」

元気よく母にそう言うと、母は微笑みながら、
「芽衣ちゃんはパティシエさんになりたいのね。お母さんも応援してる」
と言ってくれました。

キラキラと輝く特別な場所で、美味しいケーキに囲まれたい!
パティシエを最初に夢見たのは、そんな子どもらしい単純なきっかけでした。

「明日も来ようよ! 毎日ケーキ食べる!」

ケーキ屋さんからの帰り道に私がそう言うと、
「ケーキは特別な日にしか食べられないの。次はお父さんの誕生日のときかな……。
そうだ! じゃぁ、明日はお母さんと一緒にお菓子を作ろう!
芽衣ちゃんのパティシエさんとしての最初のお仕事だよ」

そんな母の提案をきっかけに、母と二人でお菓子を作るようになりました。
作ったお菓子を父にあげると、「すごく美味しい!」と言って喜んでくれて、それがすごく嬉しかったのを覚えています。

だんだんと一人で作れるようになった頃には、あの日母に言われた「特別な日のケーキ」を私もいつか作れるようになりたい! と、パティシエをキラキラした憧れではなく、将来叶えたい目標として夢に描くようになりました。

父から伝えられた夢を追いかける厳しさ

中学3年生の秋。
三者面談の帰り道に、高校を卒業したら製菓の専門学校に進学したいことを母に伝えました。

「ずっとパティシエになりたいって言ってたものね。
わかった。お母さんも応援してるよ」
母は小さい時と変わらず、私の夢をやさしく受け止めてくれました。

一方、父とは思春期ということもあり、普段からあまり会話のない生活でした。
夜、父が帰宅してから将来の夢のことを伝えると、

「芽衣が、お菓子作りを好きなことは知ってる。
でも、好きなことを仕事にすることは、そんなに甘いことではないよ。
想像以上に過酷で肉体労働だし、芽衣にはそんな現実を受け止める覚悟があるのか?」

そんな風に突き放すように言われ、私はショックを受けました。

小さい頃から、私の作るお菓子を「美味しい」と言って食べていてくれたのに……。
私の夢を理解してくれると思っていたのに……。

私は、父の現実的な言葉に自分の夢を否定されたような気がして、
「もういい……っ!! 応援してくると思ったのに……!!」
そう言い放って、逃げるように自分の部屋に戻りました。

しばらくして、母が私の部屋に来ました。

「お父さん、『ちょっと言い過ぎたかもしれない』って反省していたわ」
「あんな風に言わなくたって……私の小さい頃からの夢なのに……」

母に慰められても、父に否定されたという私の心は前向きになれず、ベッドで布団の中にもぐりこみ一人で涙しました。

それでも私はパティシエになりたい!

それからしばらく、父との会話もない毎日が続いていました。
けれで、あの時父に言われた言葉は、胸に強く残っています。

「もうすぐクリスマスね。お父さんにケーキでも作ってあげたら?」

父との関係を心配した母からの提案。
最初はそんな気にもなれませんでしたが、「覚悟があるのか?」という父の言葉を思い出し、私ははっとしました。

そうだ。
とびきり美味しいクリスマスケーキを作って、私の気持ちが本気なんだって伝えよう。

私はその日から、スポンジの焼き方や美味しい生クリームの分量など、本やインターネットで調べては休みの日に練習しました。
当日のクリスマスには、今まで食べた中で一番美味しいケーキを作って父を驚かせる。
そして、私の夢を認めてもらうんだ――!!

クリスマス当日。
私はシンプルないちごのショートケーキを作ることにしました。

スポンジはふわふわになるようしっかりメレンゲを泡立てて、生クリームも父の好みに合わせて甘すぎない分量に。
事前に練習した時よりも、慎重に、丁寧に、ひとつひとつの工程を進めていきました。

なんとか失敗することはなく、デコレーションまで終了。
まだまだお店のケーキには程遠いけれど、生クリームもきちんと綺麗に塗れたし、スポンジだってふわふわに焼けた。
今まで作った中で、一番と思う出来栄えになりました。

「すごい! 上手にできたね!
芽衣がこんなケーキを作ったって知ったら、お父さん絶対びっくりするわよ」

母は私のケーキを見て、感激したように褒めてくれました。
でも、父が認めてくれなかったら――。

そんな思いが頭をよぎり、不安な気持ちで押しつぶされそうになりながら、父の帰宅を待ちました。

夢をあきらめないと誓った日

夜、父が帰宅して晩御飯を食べた後。
私は意を決して、テーブルの上にクリスマスケーキを出しました。

「お父さん、これ私が作ったの。
お店のケーキよりはキレイじゃないかもしれないけど……。
一生懸命調べて練習して作ったから、食べて欲しい……」

「……これ……、芽衣が作ったのか……? すごいじゃないか……!」
テーブルに出されたケーキをまじまじと見て、父は驚いたように言いました。

父の様子に、少しだけ胸の中にほっとした気持ちが広がりながら、ケーキを切り分け、目の前に差し出しました。
フォークで先端をすくい、口へ運ぶ父を緊張しながら見つめます。

「……うん。すごく美味しいよ。芽衣、がんばったなぁ……」
そう言って、父は、小さい頃にお菓子を作ってあげた時と同じ笑顔で、とても喜んでくれました。

「この間は、厳しいことを言ってごめんな。芽衣の夢を否定したつもりではなかったんだ。
ただ、パティシエという仕事は本当に大変な仕事で、中途半端な気持ちではなれないということを伝えておきたかったんだよ。
でも、このケーキを食べて、芽衣が本気で夢を叶えたいんだって分かった。

お父さんも、芽衣の夢を応援するよ」

父のあたたかい言葉を聞いて、自然と涙が溢れてきました。

そんな私の背中をさすりながら、
「さぁ、みんなでケーキを食べましょう」
と、母が笑顔を向けてくれます。

父と母が応援してくれたパティシエの夢。
どんなに辛いことがあっても、絶対にあきらめずに夢を叶えよう!

そう心に誓いました。

父から娘へ……パティシエの夢を叶えるためのサプライズ!

3月の澄んだ青空の日。
私は、中学校を卒業しました。

卒業式から帰宅後、父が、
「明日の午後は、ホテルに行って家族だけで卒業パーティーをしよう」
と、突然提案してきました。

「いいけど、何を食べに行くの?」
ホテルで食事なんて、そんな豪華な料理は経験したことがなかったので、驚きました。

「それは行ったら分かるよ。芽衣に卒業のお祝いだ」

そう言って、先を歩く父の後ろで、
「お父さん、芽衣にすごいサプライズ考えているのよ!」
と、母がワクワクしながら耳打ちしてきました。

サプライズ――??

そして次の日。家族3人でホテルへ行きました。
見たことのない豪華な内装に、私はついキョロキョロと辺りを見回してしてしまい、父に「堂々としてなさい」と言われるほど。
ホテルのラウンジに入り、席に座っても落ち着きません。

しばらくすると私たちが囲むテーブルに、いちごのタルト、カップケーキなどたくさんのスイーツが運ばれてきました。
「可愛い! テレビに出てくるオシャレなカフェみたい!」

カラフルでキラキラとした色とりどりの美味しそうなスイーツ。
幼い日に、母と行ったケーキ屋さんと同じように輝くスイーツたちに囲まれ、私のテンションは最高潮です。

嬉しそうにはしゃぐ私に、笑顔で父が言いました。

「これがホテルの『アフタヌーンティー』だよ。
実際に見て、食べて楽しむと、パティシエの夢が現実に近くなるかなと思って連れてきたんだ。
これからも、お父さんとお母さんは芽衣のことを一番に応援しているよ。
芽衣、中学校卒業おめでとう!」

父からのその言葉に私はとても胸が打たれ、
「……ありがとう!」
と満面の笑顔で応えました。

父から私へのサプライズは、はじめてのアフタヌーンティー。

「私もいつかこんなスイーツを作って食べさせてあげるね!」

そう、父と母に約束しました。
忘れられないサプライズの日。
絶対にパティシエの夢を叶ようと、改めて心に誓いました。

あの日の父からのサプライズを胸に

あれから、3年。

夢の第一歩である製菓の専門学校へ入学しました。
小さい頃に夢にみた、スイーツに囲まれて過ごす時間。
学校にいる間だけだけど、ちょっとだけそんな日々を過ごしています。

あの日、色とりどりのスイーツが並んだケーキスタンドと家族3人で写真を撮りました。
父がスイーツにちなんだフォトフレームを一緒にプレゼントしてくれて、いつも目につくところに飾っています。

勉強が辛いときにこの写真を見ると、両親への感謝といつか自分が作ったスイーツを食べてもらいたいという気持ちが湧いてきます。

スイーツは食べると形は残りませんが、食べたときの味や思い出、サプライズはその人の心のなかに残り続けるのだと実感したあの日。
私も誰かのサプライズがお手伝いできるような、素敵なスイーツを作れるパティシエになろうと日々頑張っています!

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