陸上部を卒業する先輩へ…部員の想いが詰まったサプライズプレゼント

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先輩方と走る、最後の冬

「ラスト1周、400m! 斉藤、スパートかけろ!」
「はいっ!」

冬の寒空の下、監督の声が刺さる。息が上がり、肺が今にも爆発しそうだ。
自分に負けそうになる心をぐっと押し込めて、必死で次の一歩を踏み出していく……。

僕らが所属する高校の陸上部は、県内でも有数の駅伝強豪校として知られています。
部員は1年生から3年生まで約50名。
駅伝大会に出れるのは、1チーム7区までの7名で、部員内ではメンバー争いが常に繰り広げられています。
2年生の僕は、練習で結果が出せず、メンバーに選ばれたことはまだありませんでした。

やっとゴールに辿り着きクールダウンしていると、すぐ横を軽やかに駆け抜ける一人の姿が見えました。
楠木先輩です。

いつもストイックに練習を重ね、僕が知る全ての大会でメンバーに選ばれている、この部の主戦力。
かといって、傲るところがなく後輩にも優しいので、今年の春から部長に選ばれました。

楠木先輩は、ゆるやかにスピードを落とし、全員が走り込みを終えたのを確認して、
「今日はこのくらいにして、ストレッチを入念にしようか。どうでしょう?」
とコーチに打診していました。

来週は3年生にとって引退戦となる駅伝大会が控えているのです。
出場するのは主に3年生で、2年生は2人程。そこに僕は含まれていません。

楠木先輩たちが引退したら、僕らが3年生か……強豪校としての成績を維持していけるだろうか。
僕は、走り込みでパンパンに張った脚をゆっくりほぐしながら、先輩方が不在になる陸上部を心細く思っていました。

涙の駅伝大会

迎えた駅伝大会当日、発表された最終メンバーに楠木先輩の名前はありませんでした。

一瞬その場がざわめき、不思議に思う部員たちに、
「楠木は先週あたりから靭帯を痛めていて、今日は出場できるコンディションじゃないんだ」
と監督が説明しました。

練習のときはそんな素振り一切見せていなかったのに……。

楠木先輩は、悔しさを噛み殺すような表情で「みんな頑張ってくれよ」と笑って言いました。

楠木先輩を除く7名で構成されたメンバーは、本番必死に走り、タスキをつなぎました。
しかし、その日は今シーズン最も強い寒波が押し寄せ、凍り付くような寒さで途中脚がつる選手が出るなど、アクシデントが続きました。

結果は20チーム中11位。
僕が知る大会成績の中で、最悪の結果でした。

出場したメンバーだけでなく、必死で応援した部員全員が、実らなかった想いに涙しました。
そして、いつも気丈に振舞っていた楠木先輩が涙する姿を初めて見て、僕もボロボロと涙が止まりませんでした。

こうして、3年生最後の駅伝大会は幕を閉じました。

先輩から渡されたタスキ

部にふらりと楠木先輩が現れたのは、それから2週間後のことでした。

「斉藤、ちょっといいか?」
楠木先輩が真剣な顔つきで呼びかけてきました。

走り込みの集団から逸れてベンチで二人になると、先輩からの申し出に僕は驚きました。

「斉藤に、次の部長をお願いしたいと思ってる。」

僕が? 大会メンバーに選ばれたこともないこの僕が? 楠木先輩の後任?

「あの……僕は成績が良い方ではないですし……なぜ僕なんでしょうか。」
恐る恐る尋ねる僕に楠木先輩は微笑んで、そして真剣な顔で答えてくれました。

「成績が良い部員が部長に向いているとは限らないんだ。
それよりも今は、この部全体を見渡せて、選手一人一人のメンタル・体をケアできる部長が必要なんだ。
この前の駅伝大会だって、サポートできる人が足りなかったことの結果だと俺は思ってる。
斉藤が部長になって、その優しい眼差しで、選手一人一人が最大限のパフォーマンスを発揮できるようサポートしてやってほしい。」

そんなふうに、部のこと、僕のことを見てくれていたんだ……。
僕に務まるだろうか。もちろん不安はある。
けれど今は、楠木先輩から渡されたこの想いに、応えたい。

「先輩から渡されたそのタスキ、僕がしっかり受け取ります。」

そうか、頼んだぞ、と先輩は笑顔で僕の背中をバシッと力強く叩きました。

卒業~僕らからのタスキ

卒業式を迎えた先輩方が「ラストランを一緒に」と休日練習に加わってくれたのは、桜の花も咲き始めた心地よい晴天の日でした。
先輩方と真剣勝負でグラウンドを駆け抜けても、やっぱり追いつくことはできなくて、来年の今頃は先輩方に追いついていなければ、とひしひしと痛感しました。

練習が終わって全員集合したとき、僕ら後輩から先輩方へサプライズプレゼントを贈りました。
ミズノのランニングシューズと、名前入りのスポーツタオルです。

ランニングシューズは、サプライズプレゼントを決めた先月に、僕がこっそりロッカーで先輩方の靴のサイズをチェックして準備していました。
とても地味だけれど、僕の部長としての最初の仕事です。

「すごいな、ぴったりだよ! みんなでお揃いっていうのも、なんだか嬉しいよな。本当にありがとうな!!」

嬉しそうに手に取って眺めたり、試し履きして早速脚を動かしたりしている先輩方の姿に、後輩全員が笑顔になりました。

「大学でも陸上部に進む先輩方に、僕たちからのエールのタスキです。受け取ってくれますか?」
「もちろん!!」

来月からは、僕らが2、3年生になる。
最高の成果を出して、いつか先輩方に自慢できるようにしたい。

ありがとう、3年生。
ありがとう、楠木先輩。

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