【ホワイトデーのサプライズ】彼から貰ったマカロンの意味
文章
この物語はフィクションです。アレンジやマネできるアイデアであなたのサプライズをお手伝い!
「敦也、ただいまー」
玄関を開けると、ふわっと出汁のいい匂いが鼻をくすぐる。
「あ、美樹。お帰り」
「今日のご飯はー?」
「今日は寒いから鍋」
「やったー!」
私、上原美樹(うえはらみき)と三浦敦也(みうらあつや)は同棲2年目。
OLの私は毎日仕事に出かけるけど、敦也は小説家で、ほとんど家にいて家事をやってくれる。
敦也は小説家と言えど、残念ながらベストセラー作家ではない。
むしろ売れない作家の部類で、稼ぎは悲しいほど少ない。
私がほぼすべての生活費を出して敦也を養っているようなものだが、家事はしっかりやってくれるし、何より頑張っている敦也が好きで応援したくて一緒に暮らしている。
食卓で鍋をつつきながら私は考える。
(本当、ご飯は美味しいし優しいし、後は小説が売れたら完璧なのになー……)
「美樹? どうしたの? ボーッとして」
「あっ …… ううん。何でもない」
慌てて目をそらしたら、壁にかけてあるカレンダーが目に入った。
今日は2月の最終日。
(あー……もう半月もしたらホワイトデーか…… )
そして思い出すのは去年のホワイトデー。
付き合って初めてのホワイトデーに敦也がくれた物は、手作りのケーキだった。
(美味しかったんだけど、さ……)
正直、何か小さな物でもプレゼントがあったらと思った。
ケーキは美味しいけど、食べたら無くなってしまう。
私は、形で残る物が好きだ。
けれど、お金が常にギリギリの敦也に物をねだるのも悪い気がした。
今年もまたケーキかな……。
鍋を食べ終える頃、急に敦也が切り出した。
「あ、そうだ……ごめん、ちょっと出かけてくる」
「え? どこ行くの?」
敦也が夜に出かけるなんて珍しい。
「えーっと、あの……SNSで知り合った、小説家目指してるやつ同士で集まろうって話になってさ」
「そうなの……? ふーん、そっか。行ってらっしゃい」
「ん、朝までには戻るよ。朝食と弁当は作ってあって、冷蔵庫に入ってる」
そういって敦也は出かけて行った。
翌日も、その翌日も、そのまた翌日も。
結局、週に5回は夜に「集まりが……」と出かけていく。
今までに無かったことだけれど、敦也に限って浮気なんてしないだろうし、小説家を目指すもの同士、話が盛り上がるのだろう。と、私は安心しきっていたのだ。
そう、あの場面を目撃するまでは。
その日は他社へのお使いを頼まれて、私は昼の街中を歩いていた。
(う~……寒い……。早く届けて帰ろう)
そう思った矢先だった。
少し離れたアクセサリーショップから、男女のカップルが出てきたのを何げなく目にした私は、固まってしまった。
(敦、也……?)
見間違いかと思った。
しかし、カップルの男の方は間違いなく敦也で、小柄な女性と何か話をして寄り添うように歩いていく。
「嘘……」
(信じていたのに……)
(敦也が浮気なんて……)
そんな思いが、頭をぐるぐると回り続ける。
その後、どのように仕事を終えて帰ってきたのかをよく覚えていない。
気が付くと私は、家のドアの前にいた。
敦也は帰っているのだろうか……?
「……」
鍵を開けて、無言で中に入る。
リビングの灯りが付いている。敦也は帰ってきていた。
そのままリビングに入っていくと、キッチンで料理をしていた敦也は驚いた声を出した。
「うわっ? 美樹?! お、お帰り……。ごめん、気が付かなかったかな ……?」
まるでいつも通りの敦也だ。
「ただいま……」
あまりに敦也の態度が普通過ぎて、思わずいつもの対応をしてしまう。
「あ! そうそう、今日のご飯、なんだと思う? なんと、ローストビーフだよ~!」
明るく言う敦也。
その奮発して作ったであろうローストビーフは、浮気の罪滅ぼしのつもり……?
そんな疑心暗鬼に駆られている私に、敦也は食卓に着くように促す。
すると敦也は次々とごちそうを運んできた。
「すごいでしょ。頑張って作ったんだ! さ、食べよう」
「……うん」
さすがに元気に答えられない私に敦也も気が付いたのか、
「どうしたの……?」
と訊いてくる。
我慢できなくて、私は唐突に訊ねた。
「ねぇ、今日の昼、何やってたの?」
「え……? えーと、晩御飯の準備を……」
その瞬間、私は立ち上がり怒鳴っていた。
「嘘つかないでよ! 昼間、敦也と女の人がアクセサリーショップから出てくるの、見てたんだから……!」
「え?! あちゃー……見られてたの?」
予想外に、敦也は悪びれていない様子で言う。
「なっ?!」
「じゃあ、後で渡そうと思ったけど、はい、これ……」
怒り心頭でいきり立った私の前に、敦也はテーブルの下から紙袋を取り出すと、さらにその中から箱を差し出した。
「は……?」
「いやー、やっぱり僕は詰めが甘いんだな。ね、受け取ってくれないの?」
呆然とする私。
「何、これ……」
「いや、今日、ホワイトデーでしょ? プレゼント」
「え……」
「開けてみて?」
言われて素直に箱を開ける。そこには……。
「え、これって、エバーフローレスのネックレス?
それにロクシタンのクリーム……?
嘘……」
こんなプレゼント、いつの間に……?
「このところバイトして、お金貯めてたんだよ」
「じゃあ、夜出かけていたのは……」
「ごめん、小説家の集まりじゃなくて、バイト」
「……今日の女の人は……?」
「従妹の子だよ。あの辺に住んでて平日休みだっていうから、プレゼント選ぶの手伝ってもらったんだ。
ほら、僕アクセサリーは全然分からないし、女の人が欲しがる物なんて検討つかないからさ」
へなへなと身体の力が抜けて私は椅子に座りこんだ。
「ど、どうしたの? 大丈夫?!」
「ううん……私こそ、浮気してるんじゃないかって疑っちゃった……ごめんね」
「え?! 僕、浮気を疑われてたの?」
そう敦也が言うのを聞いて、私は噴き出した。
本当に鈍感だ。
こんな敦也が浮気なんて出来るわけないか。
クスクスと笑い続ける私を、敦也は不思議そうな顔で見つめ続けた。
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