STORY
孫から祖父母へサプライズ!“落書き”をクリスマスプレゼントに?!
突然届いた孫からのクリスマスプレゼント。中身は……お守り?!
クリスマスイブの日。
買い物から帰ってきてポストを覗くと、メール便が届いていました。
差出人は、小学校2年生の孫からです。
「あら、ゆう君からだわ。何かしら? お守り……?」
リビングに戻り、夫と一緒に開けることにしました。

中から出てきたのは、小さなお守りとメッセージカードです。
お守りには、かわいい絵が見覚えのあるタッチで描かれています。
夫の顔を見るとすでにニコニコ笑顔。
『もしかしてこれ、祐樹が描いた絵をお守りにしてくれたのか?』
柄になくウキウキしています。
ここまでは、おじいちゃん、おばあちゃん目線のクリスマスイブの様子。
今回は、息子から私の両親であるおじいちゃんおばあちゃんへのクリスマスプレゼントのサプライズアイデアを、母親である私の目線からご紹介します。
きっかけは息子の『ねえ、僕もサンタさんになりたいな』という一言
私たちは都内に住む3人家族です。
夫の父は5年前に、そして夫の母は2年前に他界したため、息子にとって現在会いに行ける祖父母は福岡に住む私の両親のみ。
年に2回ほどしか会えませんが、Skypeで頻繁に連絡を取っています。
息子が生まれてから、誕生日とクリスマス、子どもの日や習い事の発表会があった日などには、欠かさずプレゼントを用意してくれていた両親。
特にクリスマスには、息子が欲しいおもちゃだけでなく、勉強に役立ちそうな知育系のおもちゃや本などをたくさん送ってくれたので、息子とよく、
「なんだか、福岡のじいじとばあばがサンタクロースみたいだねぇ」
と喜んだものです。
そんな息子ももう小学校2年生。
年長さんの頃からサンタクロースの存在を疑い始め、ついに今年、
「僕さ、サンタクロースがお父さんとお母さんだってもう分かってるんだ」
と大人びた表情でカミングアウトしてきました。
その横顔を見て、『あぁ、来るべきときが来たんだなぁ』と思った私。
「じゃあ、今年からはハッキリ聞いちゃうね。プレゼント、何が欲しい?」
と聞いてみました。
すると、
『ねえ、僕もサンタさんになりたいな』
と思いもよらない言葉が返ってきます。
「祐樹はサンタさんになりたいのかぁ。誰にプレゼントをあげるの?」
と聞くと、
『福岡のじいじとばあば』
とのこと。
小さな頃からサンタさんのようにたくさんプレゼントを用意してくれた2人に、今度は自分がプレゼントを用意したいと思ったようでした。
「わあ! それはいい考えだね。じいじもばあばも絶対喜ぶよ」
と声をかけると、満足そうな顔。
……かと思えば真剣な眼差しで、
「でもさ、どんなプレゼントにしたらいいか分からなくて。お母さん、一緒に考えてくれない?」
とつぶやきます。

『もちろんだよ。じゃあ早速一緒に考えようか』
息子の絵が大好きな両親と、祖父母に長生きしてほしい息子の願い
最初に私たちが取り掛かったのは、2人の好きなものを紙に書き出す作業です。
祐樹に、
『プレゼントは自分が渡したいものではなく、相手が喜ぶものを選ぶといいよ』
とアドバイスしたところ、2人の好きなものを知るところから始めたいと言い出したので、紙とペンを用意しました。

「じいじはビールとお魚と枝豆が好きだよね。ばあばは花とか本とか、クッキーも好きだったし、赤い靴下が大好きで何足も持ってるよね」
と次々と書いていく祐樹。
それを見ているとふと、両親が息子の絵を何枚も壁に貼ってくれていることを思い出しました。
『そういえばさ、2人とも祐樹の絵が大好きだよね』
と声をかけると、一瞬うれしそうな顔をした直後に、
「あ、でも僕の絵なんかプレゼントにならないよー。もう小学生だもん」
と口をとがらせる祐樹。
『そんなことないよ。祐樹の絵は祐樹にしか書けないし、今の祐樹が描いた絵を見たいんじゃないかなぁ。……あ! そういえばお母さん、この前ちょうどいいものを見つけたんだ』
私はスマホを開き、“子ども 落書き お守り”で検索します。
出てきたのは、子どもが描いた絵を刺繍してお守りを作ってくれるサービスです。
注文すると自宅に専用の用紙が届き、指定された場所に絵やメッセージを書いて返送すると、お守りに刺繍してプレゼントしたい相手へ届けてくれるのだとか。
ただ、子どもにとって“お守り”はあまり馴染みのない存在だと思うので、却下されるだろうなと思っていました。
いくら自分の絵が好きな祖父母宛のプレゼントとはいえ、照れ臭い気持ちもあるでしょう。
しかし予想に反して祐樹は、
「すごい! これならプレゼントにできるね。僕、これにしたい!」
とうれしそうに画面をのぞき込んでいてビックリ。
しばらく考えてみてもらいましたが、やはりお守りが良いとのことでプレゼントは決定です。
注文手続きを進め、数日後にキットが2つ自宅へ届きました。
祐樹は熱心に色鉛筆を握り、2人の似顔絵を仕上げていきます。
昔はぐしゃぐしゃと線を描くので精いっぱいだったのに、いつの間にか2人の特徴を上手に掴んだ味のある絵を描けるようになっていました。
それでいて、髪の毛の配色や目の形、口元の書き方なんかは小さいときと同じ。
成長を感じるのにピッタリな絵です。
続いて、キットに同封されていたメッセージカードの記入に取り掛かります。
絵よりも文章の方が難しかったようで、祐樹は丸3日悩み続けました。
ようやく書き始めたと思ったら、何度も消しゴムで消してまた書いての繰り返し。
祐樹の中で何か伝えたい想いがあるのだと、その行動からヒシヒシと伝わってきます。
ようやく書き上げたメッセージカードはボロボロになっていましたが、2人とも喜んでくれること間違いなしです。
すぐに返送し、お守りの製作に取り掛かってもらいました。
製作期間はおよそ2週間。
ギリギリクリスマス前に届くぐらいの日程で返送できて、一安心です。
あとは、両親の『届いたよ』という連絡を待つだけ。
直接渡せないからこそ、想いをしっかり込めてプレゼント
クリスマスイブの日。
晩御飯を作っていると母から電話がかかってきました。
「あ、もしもし。さつき、お守り届いたよ。ありがとうね。顔見てお礼を言いたいから、ゆう君とSkypeで話してもいいかな?」
とうれしそうな涙声。
『もちろん! ちょっと待ってね。祐樹ー、ばあばが話したいって』
と宿題中の祐樹に声をかけると、すでに照れくさそうな顔をしながら近寄ってきます。
「あ、ばあば? うん、そうそう僕が描いたの。ふふふ、どういたしまして。2人が長生きできるように、しっかり願い事をしながら描いたんだ。だから世界一のお守りだと思うよ」
と、しっかりした口調で伝える祐樹。
時間をかけて仕上げたメッセージカードには、
『じいじ、ばあば、メリークリスマス。今年は僕がサンタクロースです。お酒やお花がいいかなとも思いましたが、僕は2人に元気で長生きしてほしいと思っています。だからお守りにしました。鞄に付けてね。僕がずっと守るよ』
と書かれていました。
息子は今回のプレゼントを通して、2人に“長生きしてほしい”という想いを伝えたかったようです。
その想いは遠く離れた2人にもしっかり伝わっています。
「祐樹、じいじもばあばも100歳まで生きるからな!」
と、画面越しに父が力強く答えてくれました。

ちなみに落書きをお守りにしてくれるサービスのお金は、祐樹が自分でお支払い。
これまでコツコツと貯めてきたお金だからこそ、大好きな2人のために使いたかったそうです。
いつまでも小さな子どもだと思っていましたが、やさしく人を思いやれる少年に成長しつつあることが分かり、私まで幸せな気持ちになれたクリスマスでした。