STORY
【サプライズが苦手な彼氏へ】肩ひじ張らないクリスマスパーティー
リラックスできるおうちデートでサプライズ大作戦
「おじゃましまーす」
クリスマスイブの夜、仕事帰りの彼が私の部屋へ遊びにきました。
今日は2人でささやかなクリスマスパーティーをする予定です。
「あれ?! もしかして沙綾、ご飯作ってくれたの?」
彼の驚く顔を見て私はニンマリ。
付き合ってもう3年になりますが、これまで一度も手料理を振舞ったことがありません。
このクリスマスパーティーでも、彼には事前に『おいしそうなお惣菜屋さんを見つけたから、オードブル予約しておいたよ』と伝えていました。
彼氏の駿也はきっと、私は料理ができないと思っているはずです。
しかし実は私、料理が大の得意!
昔から忙しい母に代わって家族のご飯を用意してきたので、基本的にはどんな料理でも作れる自信があります。
ただ、極度のめんどくさがりなので、できれば外食やテイクアウトで済ませたいと思ってしまい、これまでずっと隠してきたというワケ(笑)。
でも今日は、付き合って3回目のクリスマス。
これまで2回一緒に過ごしてきたクリスマスでは、彼ががんばって色々とサプライズを用意してくれていました。
どれもこれも、私を喜ばせたいと思ってくれていることが伝わってくる、とても楽しいサプライズばかり。
だからこそ、今年は私が彼を喜ばせたいと思い、重い腰を上げることにしました。
「ふっふっふっ、ビックリした? 今年は私がサンタだからね、駿也の好きなメニューを作ってみたよ。さ、食べよー」

『うわ、すごいテンション上がってきた! おいしそー! いただきまーす』
これは去年、私が彼に仕掛けたクリスマスサプライズのお話です。
とっても照れ屋な彼はサプライズが大の苦手!
私たちは同じ会社で働く同い年カップル。
大学卒業後に入社した広告代理店で同期として出会い、研修にて意気投合し、すぐにお付き合いが始まりました。
あれから3年半が経ちますが、これまで大きなケンカもなく仲良く過ごしています。
この3年半の間に分かったのは、彼がとても照れ屋さんであること。
職場ではバリバリに仕事をこなし、社内の偉い人が集まる会議でも動じず堂々とプレゼンできる彼ですが、プライベートではとにかく目立つのが嫌なのだとか。
たとえば付き合って初めて迎えた彼の誕生日当日、二人でよく行くレストランにサプライズケーキをお願いしたときのことです。
食事を終えてデザートを待っているとき、店内の照明が落ちて音楽が流れた瞬間にピンときた様子の彼。
そわそわキョロキョロと落ち着かない様子で、周りからの拍手や「おめでとう」の声にぎこちない笑顔で会釈を繰り返していました。
後から聞いてみると、
「俺もこの前、沙綾の誕生日にレストランでサプライズをお願いしたじゃん? だから沙綾がレストランを予約してくれたって聞いたときからなんとなくピンと来てて。照明が落ちた瞬間に、キタ! と思ったんだよ。すごいうれしかったけど、正直緊張しすぎて今日のコース料理の味も思い出せないぐらいだ(笑)」
と照れ笑い。

たしかに何度もお手洗いに立つし、話もどこか上の空。
いつもはニコニコおいしそうに何でも食べて、ユーモアたっぷりに話を聞かせてくれる彼なのに、変だなと思ったんです。
職場では分からなかった彼の一面を知ることができて、このときは少しうれしくなったことを覚えています。
外だとサプライズ感満載……警戒されないおうちデートで決定
彼の知られざる一面を知り、うれしい反面、困ったことがあります。
それは誕生日やクリスマス、記念日のお祝いをどうするかという問題。
実は彼、サプライズを仕掛けられるのは苦手だけれど、私にサプライズを用意するのは好きみたいなんです。
誕生日の日、部屋に呼ばれたのでお邪魔すると部屋いっぱいにかわいいバルーンが散りばめられていて、宝探しゲームのような形式でプレゼントを用意してくれたこともあったし、ショッピングデート中にチラっと言った「あれ、かわいいな」という私の一言を聞いていて、デート中にこっそり購入。
デート終わりにこっそり私のバッグに忍ばせてプレゼントしてくれる、といったサプライズもありました。
こんな風にたくさんサプライズをしてもらったので、私もなにか計画したいと思うのですが、また緊張させて楽しめない……なんてことになったら可哀想。
いつものニコニコな彼のまま楽しめるサプライズがないものか、しばらく頭を悩ませました。
そこで思いついたのは、おうちデートでのサプライズ!
何度も遊びに来ている私の部屋なら彼もリラックスできるだろうし、他人の目を気にしなくていいので、たとえ途中でサプライズに気が付いたとしても緊張しなくていいはずです。

せっかくなら今まで隠してきた手料理にもチャレンジしようかなと思いました。
オードブルで本格的なクリスマスディナーっぽくするのも考えましたが、おうちデートならではのリラックス感を楽しむなら、手料理が1番だと思ったからです。
メニューはパングラタンとハンバーグ、パンプキンスープにサラダの4品。
あと、おつまみになるような簡単なアラカルトを数種類用意することにしました。
プレゼントは意外と近くに。クリスマスツリーに仕掛けたサプライズ
クリスマスイブの日、彼は少し忙しいようで2時間ほど残業すると聞いていました。
前日に買い出しは済ませておいたので、2時間の間に料理を作っておきます。
ちょうど出来上がった頃、彼から「あと5分ぐらいで着くよ」とLINEが届きました。
着いてすぐに気付いてもらえるよう、テーブルへのセッティングも完了!
彼がどんな反応を見せるのか、ドキドキしながら待っているとワインとケーキを持った彼が到着しました。
ドアを開けた瞬間、匂いで分かった様子の彼。
部屋に入ってすぐにテーブルへ並んだ料理に気が付き、冒頭の反応です。
「あれ?! もしかして沙綾、ご飯作ってくれたの?」
「ふっふっふっ、ビックリした? 今年は私がサンタだからね、駿也の好きなメニューを作ってみたよ。さ、食べよー」
『うわ、すごいテンション上がってきた! おいしそー! いただきまーす』
私が思っていた以上に驚き、喜んでくれた彼。
『うそ?! めっちゃくちゃ美味いじゃん! なんでこれまで隠してたんだよー』
とニコニコ笑いながら、どんどん食べ進めていきます。
そして途中で、
『あ! 記念すべき初めての手料理だったのに写真撮り忘れたー! 最悪だ……』
と、落ち込んだかと思ったら、
『うわ、このスープやばい。レストランより美味しいじゃん』
とまたニッコニコ。
この天真爛漫な姿を見られただけでも、サプライズは成功です。
『ふ~、美味しかった。沙綾も今日仕事だったのにこんなに作るの大変だったでしょう。ありがとう。まさかこんなサプライズがあるなんて思わなくて、ほんとにうれしかったよ』
と彼がうれしそうに笑います。
「あれ? もしかして料理だけがサプライズだと思ってる?」
二ヤリと笑う私に、彼はポカンとした表情。
「クリスマスといえばプレゼントでしょ? プレゼント、ずっと駿也の近くにあるんだけど……(笑)」
そう伝えると、彼は周りをキョロキョロと見渡します。でも見つかりません。
『えー? どこにあるの……?』
「ほら、うしろ」
指差した先はクリスマスツリーです。
1人暮らしにしては大きすぎるクリスマスツリー。
実は3日前、セールになっていたツリーを買ってきていました。
そして本来ならオーナメントを飾り付けるところを、彼へのプレゼントをオーナメントのように飾り付けることにしたのです。
小さな箱に入っているのはネクタイピンやワイヤレスイヤホン、大きな靴下に入っているのは名前入りのボールペンと前から欲しがっていたお財布といったラインナップ。
もちろん、てっぺんに飾ってある星のオーナメントにもあるプレゼントを用意してあります。

『うそでしょー?! たしかに大きいツリーだなとは思ってたけど、プレゼントを飾ってくれてたの? 全然気が付かなかったよー! ねぇねぇ、開けてもいい?』
子どものように目を輝かせて、駿也はプレゼントを開けていきます。
『うわー、これ欲しかったやつだよ。ありがとう』
プレゼントを開ける度にお礼を言ってくれる、律義さに惚れ直してしまいました。
サプライズ成功! ……と思いきや逆サプライズ?!
「駿也、星のところにもプレゼント入ってるよ」
と言うと、またワクワクした様子で手を伸ばす彼。
『…あ! 手紙だ』
そう、星のオーナメントには手紙を入れておいたのです。
日ごろはなかなか伝えられない感謝の想いを、手紙にしたためておきました。
その手紙を真剣に、そしてうれしそうに読んでくれる駿也。
『沙綾、ありがとう。俺も色々サプライズを用意してたんだけど、沙綾のサプライズに驚きすぎて何もできなかったよ(笑)。でもさ、最後に1つだけいいかな?』
そう言った彼は、サッと片足をつき、ポケットから取り出した箱を開けて私へと差し出します。

ひざまずいた瞬間にピンときた私は、すでに涙目。
『今日はこれを伝えに来たんだ。沙綾、結婚してくれますか?』
答えはもちろん、
「はい、よろしくお願いします」
今回は私が驚かせたいと思っていたクリスマスでしたが、彼にはやっぱり敵いません。
最後の最後に、特大のサプライズを用意してくれていました。
今年は婚約して初めてのクリスマスです。
相変わらずあまり彼に手料理を振る舞うことはありませんが、この日だけは特別。
今年も彼の大好きな料理を作って、おうちデートを楽しみたいと思います。