STORY
お兄ちゃんになる息子から…赤ちゃんへのプレゼントとママに贈る折り紙メダル
もうすぐママのお腹から赤ちゃんが産まれる!
ぼくは、優斗。5歳の男の子だ。
幼稚園では4月から年長さんになって、いっぱい遊んで食べて寝て、楽しい毎日を過ごしている。
しかもこの前ママから、すっごいニュースを聞いたんだ。
「優斗、もうすぐママのお腹からね、赤ちゃんが産まれるの。かわいい女の子。優斗はお兄ちゃんになるんだよ」
幼稚園で一緒の美菜ちゃんが言っていた。
美菜ちゃんにも去年弟ができたんだけど、それはそれはとっても小さくて可愛らしくて“宝物”なんだって。
それを聞いてから、僕も赤ちゃんが産まれてくるのが待ち遠しくて仕方ないんだ。

だけど、ママは最近、大きなお腹を重たそうに抱えて、どこかとっても苦しそう……。
パパに聞くと、産まれてくる赤ちゃんのために頑張ってるんだって。
「なぁ、優斗。頑張っているママと産まれてくる赤ちゃんに、プレゼントを贈らないか?」
ある日、そんなパパからの提案に、僕は思い切り「うん! そうしよう!」と応えた。
「パパはプレゼント何がいいと思う?」
僕はウキウキしながら、パパと一緒にサプライズプレゼントの計画を練り始めた。
赤ちゃんへのプレゼントは、おくるみに決定!
とはいえ、どんなものが赤ちゃんは嬉しいのか、僕にはさっぱり分からなかった。
パパも「そうだななぁ、どんなものがいいのかなぁ……」と首をかしげてばかり。
「そうだ優斗、幼稚園で一緒の美菜ちゃんに聞いてみたらどうだろう。弟さんができたばかりだったよな」
次の日僕は、美菜ちゃんに相談してみることにした。

「私のおうちは、弟の尚くんが産まれたとき、尚くんに“おくるみ”あげたよ!」
「“おくるみ”??」
「赤ちゃんがくるまる、ふわふわの毛布だよ! 赤ちゃんがホッとして、しあわせな気持ちになるの。クマさんのおくるみ、あげたんだ!」
「へぇー! おくるみ、いいね! でも、僕んちは女の子が産まれるからなぁ。クマさんじゃないのがいいかなぁ」
どんなおくるみが良いか考えていると、美菜ちゃんが鞄に付けているキーホルダーが目に留まった。
「うさぎさん! 赤ちゃんは女の子だから、うさぎさんにしよう!!」
僕はその晩パパに、美菜ちゃんとのやりとりを話した。
すると、パパは僕のアイディアに大賛成してくれた。
インターネットで探してみると、まさにぴったりのものを見つけることができて、早速パパに買ってもらった。
「赤ちゃん、きっと喜んでくれるね!」
僕はパパと目を見合わせて、二人でニヤニヤした。
ママには折り紙メダルを手作りしよう!
ママへのプレゼントは「優斗の手作りしたものが嬉しいんじゃないかな」というパパのアドバイスで、頑張っているママに折り紙メダルを作ることにした。
折り紙は幼稚園で覚えたけれど、メダルは作り方が難しそう……。
パパと一緒にインターネットの動画を見ながら、少しずつ作り始めてみた。
両面に色がついている折り紙に、四角の折り目をつけていく。
真ん中の線に向かって右側と左側を四角に折ったら、バッテンの折り目も付けて、“舟”を作るときみたいに折ったところを開いていく。
そうしたら、尖ったところを押し広げて四角にしていくんだ。
4つの四角ができたら、“鶴”を折るときみたいに端を細かく折って広げて、“鶴の羽”みたいなものを全部で4つ作る。
今度は、中心の十字を外側に折り返して、お花が開いたみたいな形にする。
外側に飛び出たままの“鶴の羽”を中心に向けて折って、先端を縁の中に折り返したら、メダルの枠ができあがり。
あとは、四角い紙にメッセージを書いて、枠の中に入れて、首にかけるリボンを裏にくっつけたら完成だ。
動画で見ると、いっぱい手順があって大変そうだった。
「でも、ママに折り紙メダルあげたい! これ作る!」
ぼくは、気合十分に折り紙メダルを作り始めたんだけど、いざ作り始めると、何回も折り返したり広げたりするところがあって、気づいたら折り紙はしわくちゃになってた。
(もう作るのやめようかな……)
半べそかいて、手も汗ばんで、折り紙は余計にしなしなになってた。
でも夜になると、ママがいないときに、
「優斗ー、どこでストップしちゃったんだ? ほら、一緒にやってみようか」
とパパが手伝ってくれたんだ。
どうしてもうまくいかないところは少しパパに手伝ってもらったけど、僕はなんとかメダルを仕上げることができた!
メダルのメッセージには『ママ がんばったね』って書いた。
(ちょっとしわしわになっちゃったけど、ママ喜んでくれるかな……)
僕は、赤ちゃんのおくるみが入った紙袋に、折り紙メダルを大切に入れた。
赤ちゃん誕生! 二人に贈るサプライズプレゼント
ママがお腹を押さえて苦しそうにし始めたのは、お天気のいい日曜日のお昼のこと。
パパが「もうすぐ赤ちゃんが産まれるかもしれない!」と言ったので、僕も急にドキドキした。
病院に向かうと、ママは出産のための部屋に入り、僕とパパは待合室で待っていることになった。
僕の手には、赤ちゃんとママに渡すプレゼントが入った紙袋。
でも、なかなか中にいるママやスタッフの人が出てくる様子はなくて、僕は気づいたらパパにもたれてウトウトとしていた。
「おぎゃーおぎゃー!!」
「お父さん! お兄ちゃん! 赤ちゃんが産まれましたよ!!」
何時間経ったんだろう……スタッフの人と赤ちゃんの声で僕は一気に目を覚ました。
パパと二人で部屋に入ると、ママのベッドの隣には赤ちゃんがいた!

「真紀、本当に頑張ったな……ありがとう!」
ママの手を握るパパの目には、涙が浮かんでいる。
「ありがとう……ほら、優斗。赤ちゃんだよ。優斗もお兄ちゃんだね」
汗びっしょりの手で、ママは優しく僕の頭を撫でてくれた。
「ママ、あのね、これ僕とパパからのプレゼントだよ」
僕は、ママに紙袋の中のプレゼントを見せた。
「わぁー! 可愛いうさぎさんのおくるみ……ありがとうね、この子もきっと喜んでくれる」
「あと……これはママに」
もう一つ、僕は紙袋から折り紙メダルを取り出した。
「え? これ優斗が自分で作ったの?」
「うん! そうだよ! ママ、いっぱいがんばったね」
僕はママの首に、手作りのメダルをかけてあげた。
ママはぽろぽろと涙を流しながら、
「優斗、本当にありがとう」
と笑顔で喜んでくれた。
赤ちゃんはぷくぷくしていて、目がクリクリで、とっても可愛かった。
(ママのお腹から産まれてくれてありがとう! これからいっぱい遊ぼうね!)
僕は赤ちゃんの小さな小さな小指をとって、約束したんだ。