STORY
同棲カップルへ、部屋中を飾る仲直りの記念日デコレーションサプライズ
バレンタインは僕たちの記念日。
彼女とは、5年ほど前に知り合いました。
友だちとふたりでボルダリングを始めることになった彼女が、僕の常連だったジムに来たことがきっかけです。

初めて、と言う彼女らに、僕と友人がアドバイスをしたことで仲良くなり、ジムで顔を合わせているうちに、すっかり意気投合。
普段からご飯を食べに行ったり、海や川へ出かけたりとグループで遊ぶようになりました。
3年ほど友人関係が続いていましたが、いつからだったか、彼女のことを女性として意識し始めていました。
そんな一昨年のバレンタイン、突然彼女からプレゼントとチョコを渡されて……。
「本命だって言ったら、困るかな……?」
そう言う彼女の顔は、緊張と恥ずかしさで真っ赤になっていて、そんな彼女がたまらなく愛おしく感じたのと同時に、彼女が僕と同じ気持ちでいてくれていたことが嬉しくて、僕は彼女をぎゅっと抱きしめました。
それから、僕たちの交際はスタート。
だから、バレンタインは僕たちにとって特別な日です。
もうすぐバレンタインデー。だけど……。
実は、半年ほど前から同棲を始めました。
お互い別の家に住んでいる時はただ好きなだけでいられたけれど、一緒に生活するとなるとそうはいきません。
今まで気にならなかった細かなことに腹が立ち、ケンカばかり。
昨日も、
「食べた後のお皿ぐらい洗ってほしい」
と彼女が言うので、
「後で洗おうと思ってたんだ」
なんて言い返したら、そのまま険悪な雰囲気に……。

彼女の言うことは、いつも正しい。
だけど、素直に謝れない僕。
もうすぐバレンタインデーがくるというのに、このまま記念日を迎えてしまうんだろうか……。
僕はそんなことを思いながら、重たい空気のリビングでため息をつきました。
バレンタインデーは素直な気持ちを伝えよう。
結局、仲直りできないまま迎えたバレンタインデー。
「おはよう」も「いってらっしゃい」も言ってくれるけれど、なんだか冷たい感じでさびしい。
せっかくの記念日。
なんとか仲直りしたい。
僕は、生まれて初めての花屋で彼女のための花束を買いました。

去年の記念日は彼女がいろいろと準備をしてくれて、僕はそれを受け取っただけ。
そう、僕はいつも彼女に甘えてばかり。
だから、今年の記念日はこの花束を贈って僕から彼女への気持ちを伝えよう。
そう決心して、僕は家路へと急ぎました。
サプライズなバレンタインプレゼント。
ふたりで暮らす部屋の前。
意を決して扉を開けた僕の目に映ったのは、いつも玄関から見る景色とは違うものでした。
目の前の廊下はキャンドルで飾られ、ゆらゆらと揺れる光に包まれています。

靴を脱いで進むと、僕たちの思い出の写真が奥の部屋へのびるように壁に貼られていました。
「これ、初めてふたりで旅行に行った時の……」
「これは、去年の記念日の……」
僕は、その写真をひとつひとつ見ながら、懐かしい気持ちと彼女と過ごした幸せな時間を思い返していました。
ふたりで過ごしたたくさんの思い出をふり返りながら、彼女への気持ちが今も変わらず、いや、それ以上のものであると改めて実感しながら、リビングの扉に手をかけます。
「おかえり」
扉を開けると、準備してくれたディナーとそれを囲うキャンドルの灯りに照らされながら、笑顔で僕を出迎える彼女がいました。

「こないだはゴメンネ。
びっくりしたでしょ?
仲直りしたくて、がんばっちゃった」
そう言いながら、はにかんで笑う彼女に、僕はぎゅっと胸が締め付けられて、2年前のバレンタインデーと同じように、彼女を強く抱きしめました。
「いろいろと準備してくれてありがとう。
すごく嬉しい……!!」
その時の僕は、どんな顔をしていたんだろう。
必死に嬉しい気持ちを伝える僕の顔を見て、彼女は笑いながら、
「よかったー!」
と言って、もう一度僕に抱きつきました。
「あ! あの……、これ……」
僕は、手にしていた花束を彼女に差し出しました。
「買ってきてくれたの?
ありがとう……、嬉しい……」
そう言いながら、本当にうれしそうに花束を抱える彼女。
「いつも甘えてばかりでゴメン。
もっと頼れる男になって、たくさん笑顔でいてもらえるようにがんばるから!
だから……、
これからも、よろしくお願いします……!!」
そう僕が言うと、彼女はほんの少し涙ぐみながら、
「こちらこそ、よろしくお願いします」
そう言って、僕に最高の笑顔を向けてくれました。