IDEA
【これからもずっと一緒にいようね】クリスマスの思い出とお揃いのマグカップ
僕はフリーのイラストレーターをしています。
小さい頃から絵を描くのが好きで、大学在学中からフリーでお仕事をするようになりました。
とはいえ、フリーランスの収入は安定せず、なかなか生活も厳しいのが現実です。
そんな僕には、同い年の彼女がいます。
大学の頃から付き合っていて、もうすぐ10年。今は一緒に暮らしています。
周りからは、そろそろ結婚しないのか、なんてプレッシャーをかけられていますが、安定した収入が得られるようになるまでは、と思っているうちに、ずるずると月日が流れてしまいました。
それでも傍にいてくれている彼女には、本当に感謝しています。
クリスマスの朝。
クリスマスとはいえ、普通の平日。
彼女は、慌ただしそうに出勤の準備をしています。
僕はその横で、端のかけたマグカップにコーヒーを注いでいました。
そういえば、このマグカップ。
付き合って初めてのクリスマスの日に、お揃いにしよう!と買ったものなんです。
端が欠けてしまったけど、彼女との大切な思い出が詰まったものだから、大切に今日まで使い続けてきました。
そんなお揃いのカップに、二人分のコーヒーを淹れ、朝ごはんの食パンとサラダをお皿に盛りつけました。
すると、身支度を終えた彼女がやってきて、その皿とカップを手際よくテーブルに並べていきます。
二人がそろって、「いただきます」と手を合わせて、食パンを頬張り、コーヒーをすする。
この時間が、僕の幸せです。

「いってきまーす!」
と元気良く出ていく彼女を見送り、僕も自分の仕事に取り掛かりました。
変わらないクリスマスの夜。
長いこと一緒にいるので、クリスマスといっても特別なことをすることもなく。
近所のお気に入りのケーキ屋さんでケーキを買って、二人で「美味しいね」と言いながら、食べる。
それくらいで、十分。
僕は、そう思っていました。
「ただいま~」
彼女が仕事から帰ってきました。
手には、いつものケーキがあります。
今日は、僕が晩御飯の担当なので、準備していた唐揚げやポテトサラダをお皿に盛りました。

朝と同じように、「いただきます」と手を合わせて、唐揚げを頬張る。
「今日のご飯も最高に美味しい!」
といいながら、もりもり食べる彼女。
今年もこうやって終わるな~、なんて、毎日の幸せをかみしめていました。
二人でクリスマスケーキを食べながら。
食後のケーキと一緒に、コーヒーを淹れようと台所へ立ちました。
すると、彼女は僕とは逆方向へと進み、部屋から何かを持ってきました。
「はい、これクリスマスプレゼントだよ。」
そういって手渡された立派な化粧箱には、白いリボンがかけられていました。
何年目からか覚えていないけど、だんだんクリスマスのプレゼントは贈りあわないようになっていたので、突然の彼女からの贈り物に驚きました。
「ごめん、僕は何も準備してなくて…」
「いいの、いいの。
ね、開けてみて!」
そう促されて箱を開けると、中にはブルーのラインが入った白いマグカップが2つ入っていました。
ぽってりとしたフォルムが優しい印象のマグカップは、少し大きめのサイズ。
長時間デスクで仕事をする僕にはぴったりでした。
「付き合ってもう10年になるね。
お揃いのマグカップももう古くなっちゃったし、これからはこの新しいマグカップで一緒にコーヒー飲もうね。」
そう言って、にっこり笑う彼女。
それは、「これからもずっと傍にいるよ」と言ってくれているようで、
僕はそんな彼女を、心の底から愛おしく思いました。
付き合いだした頃からずっと、僕の夢を応援し続けてくれている彼女。
長い間待たせてしまったけど、こんな頼りない僕だけど……。
二人でクリスマスケーキを食べながら、僕は彼女にプロポーズをする決心をしました。
